著者:朱 建榮
ISBN:978-4-86228-123-4 C0031
428ページ
ジャンル:国際関係
発売日:2022年10月30日
紹介
今、民主化すれば国家崩壊、内戦を招く!
「伝統の中国」から「世界の中国」へ、どう脱皮するか。日中双方を知る著者が伝える、過渡期の大国・等身大の姿。
・急速、全面的、大スケールで、全世界にインパクトを与える中国の台頭。その実態と行方を、過去・現在・未来の幅広い分野から検証する意欲作!
・「時代が生んだストロングマン」習近平・国家主席の評価は国内でも二分。反腐敗などこれまでの成果と、この先5年の「新時代の大改革」の成果を注視せよ。
・新疆をめぐる問題について、先進国側の先入観とその実態を比較する。
・中国の台湾侵攻は当面考えられない。国内の経済成長が優先されるから。
・分裂か、民主化か、「社会主義現代化強国」か? 超新星爆発後の中国の可能性を考える。
・米中二大惑星に直面する日本。二者択一ではなく、ミドルパワーとしての役割への期待。
・「過去」を引きずる中国の対日観と、「未来」への恐れが先走りする日本の対中観。バイアスにとらわれず、活気あるアジアの発展をリードする日中協力への道を探そう。
目次
序文 ウクライナ戦争と中国の試練
第一章 「超新星爆発」が進行中の中国
第二章 核融合の仕組み──中国パワーの形成
第三章 習近平時代──未知への新しい長征
第四章 反腐敗闘争──「荒治療」背後の危機感
第五章 マグマと溶岩流──中国社会の深層を覗く
第六章 「第四次産業革命をキャッチせよ」──目標牽引型の中国経済
第七章 二つの巨大惑星の衝突──米中摩擦の行方
第八章 中国外交の再検証──現行秩序内の「現状変更国家」
第九章 「必殺技」戦略──旧ソ連の教訓を汲んだ軍事力整備
第十章 鳴くまで待とう──中国の台湾統一戦略
第十一章 香港と新疆──「国民国家」に脱皮する陣痛
第十二章 2050年の中国──「現代化強国」でもカオスでもない
第十三章 日中関係──「座標軸」の漂流と迫られる「再選択」
著者プロフィール
朱 建榮(しゅ・けんえい)
東洋学園大学教授。1957年上海市生まれ。華東師範大学卒業。
学習院大学大学院で政治学博士号を取得。
学習院大学・東京大学・早稲田大学非常勤講師、米国ジョージ・ワシントン大学客員研究員、英国ロンドン大学東洋アフリカ学院客員研究員を経る。
著書『毛沢東の朝鮮戦争』(岩波書店、アジア・太平洋賞受賞)『毛沢東のベトナム戦争』(東京大学出版会)『江沢民の中国』(中公新書)ほか
「あとがき」より
日本で中国のイメージが大幅に悪くなったのは21世紀初頭で、米国は近年だ。いずれも国力が急速に追い上げられ、「恐れ」出した段階に当たる。「超新星爆発」の中国に対するショック、「怖い」という感情はいつの間にか、脅威感、「嫌い」にエスカレートしていった。
このような心理的バイアスを克服し、等身大の中国を伝えるのが本書の仕事と考えた。ロングスパンで中国を捉えれば、今の中国は「伝統の中国」から「世界の中国」に転換する真っただ中にある。東洋的政治社会構造をベースに、14億の民を「世界の中国」にシフトしていく転換期に、「秩序」を優先にし、ある程度自由を制限するのは、20世紀以来の歴代中国指導者の発想だった。孫文は1924年に書いた「建国大綱」の中で、国を建設する順序として軍政(すべてを統制)、訓政(党国体制で民衆を教育)、最後に民主的憲政、という3段階を提示した。紆余曲折を経て、小さな台湾は第3段階に入ったが、巨大な中国は第2段階からの脱皮中である。経済躍進後の政治社会の転換は、なおさらデリケートだ。自由を野放しにすれば国家秩序が壊れ、内戦に発展しかねない懸念を、少なくとも7割から8割の中国人は共有している。しかし第十二章で検証したように、この「訓政」の構造は、もはや長続きできない時期に来ている。